森の暮らし:廃材で家を手づくり

森の暮らし, 建築・セルフビルド, 移住・田舎暮らし, エコ・環境, 執筆・メディア掲載, 旧 開拓生活研究所

北海道新聞にコラム「アウトドアで行こう」連載開始

森の暮らし:廃材で家を手づくり

北海道新聞釧路版コラム「アウトドアで行こう」の連載が開始されました。

第1回目は自己紹介をかねて、北海道に移住して来て廃材を活用してセルフビルドで家を建てた話です。

森の暮らし:廃材で家を手づくり

まりも国道(国道240号)から五㌔ほど山に入った森の中に小さな木の家が建っている。周りにはまきが積まれ、煙突から煙がゆっくりと昇っている。ここが私たち夫婦の住まいだ。
一九九六年、埼玉県からここ釧路市阿寒町に移住した。都会の人工物に囲まれた生活に疑問を持ち、自分たちの手で理想の住環境を作り上げるために。
近所の農家の離れを借り、道路も水道もないこの土地に通い、ササ刈りから始めた。道をひらき、わき水を引く。普段当たり前のように利用して来た、生活に必要な基盤を、すべて自分の手で用意しなければならなかった。
何もかもが初めての体験、試行錯誤の繰り返しだった。そんなとき一番心強かったのは近所の人たちのアドバイスだった。この地で農業を始め時代を生き抜いて来た人々は、都会の人間では知り得ない「生きていくための知恵」を持っている。それはこれから自然の中で暮らしていこうとする私たちにとって、まさに生きた見本だった。
家を建てるための材料は一〇〇%自然素材を使うと決めていた。化学物質は一切使いたくなかった。究極のエコ素材として廃材を使うことを思いついた。近所の農家にその話をすると、「古い家や牛舎を解体して使えばいい」と言ってくれた。実際やってみると、時間がかかる割に使える部材は意外と少ない。しかし、手間ひまをかけて手に入れた材料は愛着もひとしおだった。
途中、釧路高等技術専門学院に一年間通い、本格的に建築技術と知識を学んだ。この期間も含め、何とか雨露をしのげる程度の家を建てるまでに、四年余りの月日を要した。
二〇〇〇年晩秋、厳しい冬の足音が近づくころ、私たちの森の生活はスタートした。(有明正之・釧路市阿寒町在住)

キャプション:
上 阿寒町徹別の森の奥深くにある手づくりの自宅
下 1999年、建設中の自宅。建材の9割は廃材だ。

ありあけ・まさゆき 1957年秋田県生まれ。大学時代にロッククライミングを本格的に始め、国内外の岸壁、氷壁を制する。1985年にはネパール・アマ・ダブラム峰(標高6812㍍)の氷の「西壁」を世界初登坂。96年に阿寒町(現釧路市阿寒町)徹別の森に移住。現在、登山の技術を生かし高所特殊作業を行う「パイオニアラボ高所作業チーム」と、ホームページやネットショップ制作の「パイオアニアラボ」を運営する。