森の隣人:自宅そばにヒグマの足跡やふん

動物, 森の暮らし, 自然, 執筆・メディア掲載, 旧 開拓生活研究所

北海道新聞にコラム「アウトドアで行こう」掲載

森の隣人:自宅そばに足跡やふん

北海道新聞釧路版のコラム「アウトドアで行こう」の連載4回目。

移住そうそうヒグマの話題がたっぷり、阿寒の森はヒグマの生息地でした。

森の隣人:自宅そばにヒグマの足跡やふん

移住してきた当初は、近所の農家の離れを間借りし、そこからこの森に通っては笹刈
りや整地などの作業をしていた。
ある日いつものよう仕事をしていると、地面に見たことの無い物体が落ちていた。何
かのフンである、それもかなり大きい。形からするとエゾ鹿のモノでない事は明らかだ。
この付近に生息するエゾ鹿以外の大型動物と言えば・・・。
すぐに近所の老猟師を訪ね、見に来てもらった。その猟師は木の枝でそのフンをしば
らく突っついた後おもむろにこう言った。「こりゃあクマだな。」さらに付け加えて「こ
の辺りは昔からクマの通り道だからなぁ。」
この付近にヒグマが生息している事はもちろん知っていた。北海道の森で暮らそうと
言うのだからその位の事は当然覚悟していた。しかし実際にフンが落ちていたとなると穏
やかでない。なにせ、この場所は建築予定地から50mと離れていない処なのだから。
それから一週間ほどたったある日、その老猟師から電話がかかって来た。やや耳の遠
いその人は大声で一言「クマを捕ったから見に来いや。」
もちろん二つ返事で駆けつけた。家の前には近所の人が何人か集まっていた。そしてその
中心に皮だけになったヒグマが鎮座していた。
若いクマらしくそれ程大きくはないと言うが150kgはあるそうだ。充分デカイ!
ふと気がつくと、家の中からは鍋物の香ばしいにおいが漂ってきている。鍋の具が何かは
言うまでもない。
森で暮らすようになってからも、足跡やフンなどの痕跡はたびたび見かける。けれど
残念ながら、私はまだ本物に出くわしたことはない。(妻は散歩の途中で一度見かけた事
がある。ちょっとウラヤマシイ。)
ヒグマは出会い頭でもない限り自分から人間に近づいて来ることはまず無いと言う。
とてもシャイな森の隣人であるが、いつの日かお目にかかれる時を楽しみにしている。

キャプション:
上 晩秋の芦別岳で見つけたヒグマの足跡、わが家の前の道路にも、同じような足跡があった。
下 皮だけの姿になったヒグマ。老漁師がしとめた