わき水ホース 凍結で汗:「アウトドアで行こう」

森の暮らし, 建築・セルフビルド, エコ・環境, 気象・気候, 自然, 執筆・メディア掲載

北海道新聞にコラム「アウトドアで行こう」掲載

わき水ホース 凍結で汗

北海道新聞釧路版のコラム「アウトドアで行こう」の連載7回目。

わが家の水道は森の中のわき水を使っている。
ワサビが育つほどきれいな水なのだが、それなりの苦労もある。

わき水ホース 凍結で汗

阿寒の森で暮らし始める時、人が生きていく上で欠かす事の出来ない飲み水をどう確保するかは、森のくらしを始める時に最も大事な事の一つだったが、幸いここにはわき水があった。
水源地に土管を埋めて、そこから百メートルほど離れたわが家まで、わき水をゴムホースで引いて使っている。保健所で検査をしてもらって水質を確認し、外からの水が土管の中に入らないように気を付けてはいるが、エキノコックスが心配なので飲む分だけは煮沸するようにしている。
ホースは森の中の地表をそのまま這わせてある。夏はこれで平気なのだが、問題は冬だ。
地面の上のホースに留まった水はあっと言う間に凍ってしまう。そのため冬季は蛇口の水を流しっぱなしにしている。普通なら「水を使った後はちゃんと水栓を閉めましょう。」なのだが、わが家の場合は使用後に決して水を止めないで下さい。となる。
ある時、内地から友達が遊びに来た時、つい蛇口を閉めてしまいホースを凍らせてしまった事がある。その友は若い頃一緒に山登りをしていた気の置けない仲だ、作業を手伝わせるのに躊躇はない。二人で合計100メートルの予備のホースを担ぎ、夜の森に繰り出し、冬だというのに大汗をかいて新しいホースを引き直した。
「いやあ、まいった。こんな事をさせられるなんて思いもしなかったよ。」作業を終え家に戻るなり彼私に向かってこんな愚痴をこぼす、しかしその目笑っていた。
彼が、そんな状況を楽しんでいたことは言うまでもなかった。

キャプション:
右 水源から自宅まで水を運ぶ長さ100mのホース
左 ホースの近くに自生するワサビ。水がきれいな証拠だ

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