ビル登り:「朝の食卓」

クライミング, アウトドア, 執筆・メディア掲載, 少しは仕事の話も

 

北海道新聞朝刊の連載コラム「朝の食卓」掲載

北海道新聞朝刊の「朝の食卓」の執筆者の一人としてコラムを連載することになりました。

初回は、自己紹介をかねて、パイオニアラボのメインの業務の「【高所作業チーム】のことを書いています。


「ビル登り」 有明 正之

北海道新聞のコラム「朝の食卓」

私はいくつか仕事を持っているが、一つはビルの壁にロープでぶら下がって作業することだ。

ゴンドラや足場は設置しない。ロープとわずかな装備でビルや鉄塔に登り、外壁の点検や設備の交換から、看板の取り付けなどを行うのだ。

このロープ一本で行う高所作業を海外では「ロープアクセス」と呼び、一つの技術として確立されている。日本ではまだまだ珍しいが、設備が不要でコストが安いため、意外に需要は多い。

若いころから続けてきた岩壁登攀(とうはん)が、こんな風に役立つのだから、無駄な経験はないものだとつくづく思う。

このあいだ、口の悪い知人が言った。「お金をもらって登山の訓練ができるんだから、楽しくてしょうがないんじゃないの?」

そうは言うが、この仕事は不安定な体勢で作業を行うため全身の筋肉を酷使する。その上、冬場の寒さは半端じゃない。見た目よりずっと大変なのだ。

だが、ちょっと待てよ。確かに、これは寒風吹きすさぶ岩場でのロッククライミングの醍醐味(だいごみ)と一緒じゃないか。

どんな仕事でもつらいか面白いかは、当人の心の持ちようで決まる。寒さはこれからが本番だが、冬季のビル登攀をめいっぱい楽しむとしよう!

(パイオニアラボ代表)・釧路

ありあけ・まさゆき 秋田県大曲市生まれ。大学進学後から国内外の岩壁を登り、1985年にはネパールのアマダブラム峰西壁を世界初登攀した。86年に釧路管内の旧阿寒町に妻と移住。51歳。