6月 132009
 

 

北海道新聞朝刊の連載コラム「朝の食卓」掲載

ストラディヴァリウス・サミットコンサートを聞きに行ったときの感想です。


「名匠の振動」 有明 正之

 先日、釧路市内で開かれた「ストラディヴァリウス・サミットコンサート」に出かけた。

 17世紀から18世紀にかけて活躍したイタリアの弦楽器製作者アントニオ・ストラディバリが作ったバイオリンなど11台がそろう数少ない機会ということで、是非聞いておきたかった。無粋だが、総額90億円相当というキャッチコピーにひかれたのも本音である。

 演奏するのはベルリンフィルのメンバーなど。普段はクラシックの演奏会に行くと、ついウトウトすることも多いのだが、今回は違った。

 「ストラディバリウス」と称される彼の名器の響きで満たされると、あまりの音の美しさに眠気は消えうせた。会場の空気の振動そのものが心地よかった。耳で聞くだけではもったいと、シャツの袖をまくり、口も少し開き、肌や体内でその響きを直接味わった。

 音楽とは、自然界に存在するある種の振動を切り取って、再構築することだと思う。元をただせば物理的な運動にすぎない空気の振動だが、名工は楽器自体に魔法のように美しさや情感を吹き込み、それを名奏者が巧みに解き放ち、聴衆に届けてくれるのだろう。

 美しい振動に大自然の神々しさを感じ、名匠たちの技に人間の無限の可能性を知らされた至福のひとときだった。

(パイオニアラボ代表)・釧路


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