解体作業

 

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解体作業

開拓生活研究所のプロジェクトで最も大きな、そして重要なプロジェクトは、家を建てることです。 建設計画を立案するにあたって、少しでもコストを節減できればと言うことで、建築廃材の利用を思いつきました。
廃材、と言う言葉はあまり良い響きがありませんが、お金を掛けずに材料が手に入るんですから、こんな良い考えはありません。 幸い、この周辺は過疎化が進み、住人の居ない家があちこちで目に付きます。 近所の人たちに声を掛けておいたところ、壊していいよと言う建物が、何件か見つかりました。

解体作業初めは単なるコスト節減が理由で始めた廃材集めですが、実際に始めてみると大変な作業です。 せっかくの材料を再利用するためには、解体は慎重かつ丁寧に行わなければなりません。
さらに、開拓生活研究所の精神にのっとり、作業は重機などの機械力に頼らず、自分の体だけを使って行うこと、をポリシーとしたため、高所作業や、重い材料の取り扱いには苦労させられました。

実際に自分の手で解体を行ってみて、わかったことは、コストだけを考えたら「材料は買った方が安い。」でした。 解体に要する時間と、入手出来る材料を天秤に掛けたら、とてもじゃないけれども割の合う仕事ではありません。 解体して手に入れた材料は、とても高いものについてしまいます。

しかし、作業を進めていくうちに、いろいろな利点があることにも気がつきました。

まず第一に、最もエコロジカルな建材が入手出来ます。
自然環境へほとんどダメージを与えずに、有害物質を全く含まない自然な材料が手入れることは、現代ではとても難しいことです。

次に建築物の構造を知ることが出来ます。
材料をひとつひとつはずしていくためには、組み立てたときと反対の手順を、忠実にたどらなければいけません。特に日本の伝統的な在来軸組工法では、木材の組み合わせに複雑な仕口、継手を多用しているので、構造を理解しないと解体は難しいことがわかりました。
どうしてもはずれない材料にぶつかり、あれこれ考えた末にやっとやり方がわかったときには、複雑なパズルを解いたときの気持ちよさがあります。

さらに、材料に対する愛着が生まれます。
表面が腐りかけていたり、ひどく汚れた材料でも、試しにカンナを掛けて一皮むいた木肌が、真新しい木のようだったりすると、とても捨てる気持ちにはなれません。 これだけ苦労して手に入れた材料なんだから当たり前ですが、木っ端ひとつでも大事にとっておきたくなります。

他にいろいろな利点がありますが、最後にひとつだけ付け加えると

純粋な労働の喜びが味わえると言うこと。
建築材料を手に入れるために直接的に解体作業を行う事は、金銭労働をして入手したお金で、コマーシャルベースの材料を買う事とは全く違ったアプローチです。

今、山のようにたまっている材料から、試しに板を一枚取り出してみると、たとえばこれは北の外壁から剥がした板だ、と言うようなことがだいたい判ります。
そのくらい一本の柱、一枚の板にも手を掛けてきました。
釘穴の残った壁板を見るたびに、一枚一枚丁寧に古釘を抜いたことを思出すような家ができたとしたら、住人の家に対する愛着は、とても深いものになるに違いありません。

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